【業界研究】就活生が知るべき印刷会社の仕事内容

2023/07/18
業界の仕事内容
印刷業界
目次
1.
はじめに~印刷会社とは~
2.
‌印刷会社の仕事の流れ
3.
職種
4.
1日のスケジュール
5.
‌総合印刷会社の3つの事業
6.
‌売上高トップ企業5選
7.
印刷業界に向いている人の特徴
8.
‌もっと深く印刷業界について知るためには
9.
‌さいごに

はじめに~印刷会社とは~

前回の記事では、印刷業界の概観について解説しました。

‌今回取り扱うのは印刷に関するあらゆる事業を取り扱う、総合印刷会社と呼ばれる企業です。印刷業界の最大手である大日本印刷凸版印刷の2社も総合印刷会社に属し、幅広い分野に事業を展開しています。印刷会社というと紙媒体の製品をイメージされるかもしれませんが、事業はそればかりにとどまりません。

‌総合印刷会社は、実に多様な事業を展開しています。
‌この記事では、総合印刷会社の仕事内容について解説していきます。
‌正しく把握して、キャリア選択の参考にしてください。

‌印刷会社の仕事の流れ

まずは印刷会社が案件を受注してから、納品するまでの流れを確認しましょう。
印刷企業の仕事の流れ

1.営業・企画

営業職がヒアリングした顧客のニーズに基づき、印刷物の企画を行います。

2.デザイン・校正・製版

デザイナーやライターが企画に基づいたクリエイティブを作り、実際のデザインに仕上げていきます

パソコン上で作成したデザインを、印刷していくために必要な「版」にします。

3.印刷

2で作成した版を使用して、印刷工場の機械で印刷をします

4.製本・加工

印刷したものに製本加工を施し、実際の商品に仕上げます。

製本のタイミングで内容にミスがないかを確認しておくことも重要です。

5.納品

商品が完成したのち、品質の検査をした上で顧客に納品をします。
ここまでが印刷会社の仕事です。

職種

印刷会社の案件はどのように社内で分担されているのでしょうか?
ここからは、職種について説明していきます。

営業

以下の図のように見積もりから納品まで顧客に伴走して、印刷物の発行を支えるのが印刷業界の営業マンの仕事です。

単に受注しておしまい、ではなく様々な業務に携われるのが強みです。
印刷会社の営業マンの仕事の図表

商談

まずは企業の広報部や総務部を訪問して、ニーズのヒアリングを行います。

基本的にはルート営業がメインとなるようです。

校正

受注をすると校正作業に移ります。

校正とは、レイアウトや内容にミスがないかを確認する重要な過程です。

下版(げはん)作業

校正のOKをもらうと下版作業を行います。

これは、作成したデータを実際に印刷用の「版」にして、印刷の準備をすることを意味します。

なお、下版作業を終えるとデザインの修正ができなくなるため、営業マンの責任は重大です。

企画

企画職は、顧客の声やニーズに基づいて「売れる」印刷物を企画開発することが仕事です。

デザインのコンセプトや、コピーなど印刷物の根幹の方向性を決める重要な仕事になります。

デザイン

企画書に基づいて、デザイナーやコピーライターが印刷物のクリエイティブを作成することが仕事です。

顧客とすり合わせを行いながら、要望を具体的なクリエイティブに落とし込んでいく重要な役割を担っています。

印刷

作成された版をもとに印刷を行います

印刷業界のデジタル化は進んでいるものの、いまだに人の手によるテクニックが求められる場面も多く、専門性が高い職種です。

開発

開発職では、印刷技術の開発や、データ分析を行います。

また印刷のみならず、半導体や医療関係の精密部品の開発に携わることもできます。

印刷業界の開発職の仕事はイメージより幅広いといえるでしょう。

開発をしている男性

1日のスケジュール

ここからは印刷業界で働く社員の1日のスケジュールを紹介します。

営業職種

8:30 出社
9:00 ルート営業
11:00 見積書作成
12;00 昼休憩
13:00 新規営業
18:00 事務作業・スケジュール確認
19:00 退勤

デザイナー職種

8:30 メールチェック
9:00 リサーチ
10:00 クリエイティブ作成
12:00 昼休憩
13:00 クライアントとのミーティング
15:00 デザイン業務
19:00  退勤
スケジュール帳

‌総合印刷会社の3つの事業

‌今回は総合印刷会社の多岐にわたる事業を3つに分類しました。
‌それぞれ、どのような事業が行われているのか、しっかりと確認しましょう。

①情報コミュニケーション事業

出版印刷や商業印刷といった伝統的な事業が属するのが情報コミュニケーション事業です。しかし、紙媒体の市場規模が縮小するなかでデジタルが急速に進められるなど、大きな変化がみられる分野と言えるでしょう。以下に代表的な事業を紹介していきます。

BPO事業

印刷会社の重要な事業になりつつあるのがBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)事業

‌BPOは顧客企業が抱えている社内業務を受託し、企業活動を最適化する事業です。
‌印刷業務はもちろん、バックオフィスの代行や顧客データベースの運用、また在庫管理機能を提供して社内業務の最適化を進めます。

‌数多くの企業で社内の業務効率化が推し進められる中で、業務の外注が増加し、BPOのニーズも拡大しています。

では、なぜ印刷会社がこのような事業を展開するようになったのでしょうか。
もとを正せば印刷事業も社内の業務が外注されたもの。

‌社内業務である印刷を印刷会社に委託していたにすぎません。

‌しかし、あらゆる業務を外注する時代。
‌業務ごとに外注する会社を分けていては手間がかかります。

‌そこで印刷会社は印刷に限らず、さまざな業務を請け負うことで、顧客のニーズに応えました。
‌一貫して業務を請け負うことで、受託の可能性を高めたのです。

電子書籍事業

紙媒体が衰退する中で、印刷会社が力を入れているのが電子書籍事業です。

‌紙媒体を電子化するほか、実際に電子書店の運営に関与するなど積極的に進出しています。
‌また、販促支援やマーケティングといった顧客企業の電子出版ビジネス全般に関するサービスを提供するなど、事業の範囲は単なる電子書籍出版にとどまりません。

‌さらに、店頭で電子書籍を販売するなど、電子書籍の勢いを利用して紙媒体の書籍の売上につなげる動きも見られます。専用リーダーやPC、またタブレットやスマホなど様々な媒体で本が読める時代。拡大を続ける電子書籍市場に注目です。

メディア運営

かつては主要な業務であったチラシ発行も近年はニーズが減少しています。

‌そのような中でデジタル化の波に乗り、電子化したチラシを配信するメディアを運営している印刷会社が現れました。

‌そのほかにも電子カタログ配信サービスや地図サイト、グルメ情報サイトの運営など多岐にわたるメディアが印刷会社によって運営されています。

‌先述の電子書籍についても、書店をメディアとして持つほか、アプリ開発も併せて進めていくなどデジタル時代に適応する動きが活発になっていると言えるでしょう。

IT化が進んだイメージ

②生活・産業事業

生活産業事業は大手2社の売り上げの約25%を占めるなど、印刷会社収益の柱となりつつある事業です。
‌包装やトイレタリーといったパッケージ関連の事業や建装材事業など、生活や産業に向けた事業が属しています。

パッケージ事業

軽包装や紙器、カップなどがパッケージ事業に属します。

‌軽包装はレトルト食品用のパッケージや医療用包材などで、業界を問わず幅広く使われています。
‌高機能のパッケージはASEAN地域で需要が高まるなど、高い技術力を生かして世界的な展開も期待出来るでしょう。

‌また、環境に配慮した商品のニーズも高まりを見せつつある中で印刷会社も環境に配慮した商品を多数発表しました。利益を上げつつある事業だけに、今後の展開に要注目です。

建装材事業

印刷で培ったコーティング技術を応用して傷がつきにくい壁紙や床、建具用のシートなど生活空間に関する建装材事業も展開しています。壁紙のほかにも木材や内装、外装の仕様の提案を行うなど、生活空間と極めて密接に関係している事業です。

高機能・エネルギー関連

高機能・エネルギー関連の商品として挙げられるのは高機能なバリアフィルム。包装材料用に需要が高く、先述のパッケージ商品にも高機能のフィルムが使われています。そのほか、印刷や塗装などの多様な技術を応用して精密機器の外装部材などの加工も扱っているほか電池の外装部材を扱うなど、様々な場面で高い技術力が応用されているのです。

生活のイメージ

‌③エレクトロニクス事業

印刷事業で培った技術をディスプレイ、半導体などに応用したのがエレクトロニクス事業。現在、売り上げに占める割合は小さいですが、今後さらなる拡大が見込める分野です。

ディスプレイ事業

ディスプレイをカラーにするために必要なカラーフィルタを印刷技術を応用して製造するのも総合印刷会社の仕事の一つです。

‌このカラーフィルタは大型液晶テレビやタブレット端末、スマートフォンなど、様々な用途向けに提供されます。

‌カラーフィルタ以外にも反射防止フィルムや銅タッチセンサーなど多様なディスプレイ関連商品が印刷会社によって製造、販売されているのです。

‌半導体事業

半導体製造の過程において不可欠な製品であるフォトマスクや半導体を作る上で欠かせない部品を提供しています。

‌さらに、写真現像などで用いられるフォトリソグラフィー技術を応用して様々なエレクトロニクス機器に使用される部品の開発・製造を行っている会社もあります。
テクノロジーのイメージ

‌売上高トップ企業5選

ここからは印刷業界に属する主要な企業の
・売上高
・企業の特徴
・事業内容
‌を紹介します。
‌【参考】「印刷業界の動向、ランキングなど(2022年版)」  業界サーチ

凸版印刷株式会社 1兆5,475億円

凸版印刷は印刷業界の二強の一角です。

「印刷テクノロジー」をベースに「情報コミュニケーション」「生活・産業」「エレクトロニクス」の3分野の事業を展開しています。
凸版印刷は自社の技術力を生かし、AIを導入した音声翻訳機や、新薬開発など印刷にとどまらない技術革新に貢献しています。

h3:②大日本印刷株式会社 1兆3441億円

大日本印刷は日本の印刷業界の2番手として、凸版印刷と二強体制を築いています。

印刷(Printing)と情報(Information)の技術をかけ合わせることで、様々な新技術を開発できることが強みです。

大日本印刷ではAIを活用した雑誌のレイアウトの自動生成技術や、金融機関へのプラットフォーム提供を行っています。

NISSHA株式会社 1892億円

NISSHAは印刷技術をベースにした高い技術力が強みです。

医療分野に強く、主力の低侵襲医療用の手術機器のほか、医療用ウェアラブルセンサーなどの製品を開発・販売しています。

共同印刷株式会社 884億円

共同印刷は120年の歴史を持つ老舗の印刷会社です。

 印刷メディアを核として多角的な事業展開を行っています。

日本創発グループ 546億円

日本創発グループは、高い技術力を活かした印刷事業が強みです。

‌それに加え、ITメディアを組み合わせたセールスプロモーション開発や、魅力的な商品を開発するプロダクト開発という事業領域を持つ「創るチカラ」が集まったプロフェッショナル・グループです。

印刷業界に向いている人の特徴

「印刷業界に向いているか不安」という就活生のために印刷業界に向いている人材の特徴を解説します。
パズルのピース

クリエイティブな仕事に興味がある

印刷会社で勤務するのなら、大前提としてクリエイティブな仕事に関心があったほうが良いでしょう

印刷業界のメインの業務は、クライアントとともに印刷物を作成することです。

印刷物は0→1で作成するものであるため常に消費者に刺さるデザインや、コピー、発行物の在り方について考え続ける必要があります。

印刷業界を受ける際は「何らかの手段で、表現していくことが好きか?」といった視点で自己分析をするとよいでしょう。

地道な作業が苦にならない

印刷物には正確さが求められます。

そのため細かいところまで気配りを行える人や、地道な作業をいとわない人に向いている業界であるといえます。

コミュニケーションが得意な人

ここまで紹介してきた通り、印刷物を完成させるにはたくさんの人と連携をとる必要があります。

そのためコミュニケーションが得意で、調整能力が高い人に、おすすめの業界です。

印刷業界を志望している学生は、自己分析の時にコミュニケーション力を発揮できた経験や、調整能力を活かしたエピソードを洗い出してみましょう。


‌もっと深く印刷業界について知るためには

‌‌幅広く事業を行なっている総合印刷会社。色々な仕事があることがわかったと思います。ただ企業ごとの細かい仕事内容について知るにはOB・OGをする必要があるでしょう。

‌そんな時に便利なのが、OB・OG訪問のマッチングサービス、
Matcher(マッチャー)。

‌Matcherでは、所属大学や学年に関係なく、印刷業界で働く社会人に会いに行くことができます。カジュアルな形でOB・OG訪問できるため、細かい仕事内容や、やりがいについて質問することも可能です。

出版業界のOB・OG訪問にはマッチャー【‌社会人の所属企業一覧(一部)】
大日本印刷株式会社、凸版印刷株式会社、日経印刷株式会社、竹田印刷、他多数

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さいごに

ここまで印刷会社の仕事内容について解説してきました。

‌ここで紹介できたのは印刷会社の実際の仕事の一部にすぎません。

‌印刷業界の各企業がどのような事業を手がけているのか、さらに詳しく業務などについて知りたい場合は実際に印刷会社に勤めている人に話を聞くのが最も効果的と言えるでしょう。

‌次の記事では、就職をする際にどの企業に入社するのか。その選び方について説明します。
‌企業に伝える志望動機の考え方についても解説。ぜひ読んで、自分に合った企業を選ぶのに役立ててください。

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