上記の図は、筆者が就職活動中に使用していた「自分史」のフォーマットです。フォーマットを作成するにあたって、まずは自分の過去について掘り下げたいテーマを決めます。
今回は、勉強、部活・習い事、人間関係(家族・友達)、趣味・ハマっていたもの、当時の夢の5つのカテゴリーを用意しました。ここは自由度が高いため、自分史を通じて何を明らかにしたいのかを明確にし、自分なりのテーマ選定を行いましょう。
②過去の事実を洗い出す
フォーマットが決まったら、空白に実際に経験してきた出来事を書き込んでいきます。ここでの形式は特にありませんが、事実のみを簡潔に箇条書きにまとめると良いでしょう。
よかったことも、思い出したくもない嫌な経験もあるかもしれません。しかし、自分の人生を大局的に見る絶好の機会。自分に正直に、それぞれの時代についてまとめていきましょう。
例)
・勉強×小学生
算数が好きで、テストで高得点を取っては先生や友達に見せびらかしていた。
友達から算数で分からないところの質問を受けることがあり、説明したら「わかりやすい」「教え方がうまいね」といってもらえた。
国語は漢字を覚えるのが苦手で、テスト前になるたび泣きながら暗記をしていた。
授業では積極的に手を上げて答えようとしていた。
・人間関係×中学生
部活の友達と仲が良く、帰り道に話しながら帰って、よく近くの公園で遊んでいた。
部活では特に役割はなかったが、キャプテンと後輩の熱意の差によるいざこざがあったときは、間に入って両者の意見を聞いて、仲をとりもったりした。
クラスメイトとも関係はよく、普段から近くの席の人とたわいもない話をしていた。
体育祭や合唱大会時に、朝練の有無やモチベーションの低下でクラスの雰囲気が悪くなるのが嫌いだった。
・夢×高校
災害対応ロボットの開発がしたくて、機械系の学部を志望していた。
ドキュメンタリードラマで、災害時に活躍するロボットの存在を知り、昔からの困っている人の役に立ちたいという思いと結びついた。まだ専門的なことをよく知らなかったが、興味と研究者へのあこがれからその道に進む決断をした。
一例ですが、上記のように、なるべく事実を振り返りつつ、その背景やその時の感情を思い出せる限り記載しておくと後の深掘りがしやすくなります。
③過去のエピソードの深堀りをする

過去の事実を洗い出したことで、幼少期から大学時代に至るまでのそれぞれの経験を時系列で捉えられるようになりました。
しかし、「自分史」はここで終わりではありません。むしろここからの分析が重要。その時々で何を感じ、何を考え、何を得たのか。当時を振り返ったときに過去について何を思うのか。1つ1つの体験を深堀りし、強みや弱み、価値観を探っていきましょう。以下が深堀りの際の質問例です。
・どのように楽しかったのか/嬉しかったのか/つらかったのか/悔しかったのか
・〇〇を始めたきっかけは何か?
・〇〇の行動/〇〇の選択をしたのはなぜか?
・なぜ頑張れたのか?/なぜ頑張れなかったのか?
・当時のことを今振り返ってみると何を感じるか?
このように、自分史の背景に問題意識を持って問いかけ各時代の特徴を比較することで、共通の価値観や、昔と大きく変わった自分の考え方に気づくことができるはずです。
その中でも、特に自分自身に影響を与えたモノやコト、思い入れのある出来事は、あなたが面接で他者に伝えるエピソードになります。
自分にとって鍵になるエピソードについては、より深い分析をすると良いかもしれません。
例)
・勉強×小学生について
算数が好きで、テストで高得点を取っては先生や友達に見せびらかしていた。
友達から算数で分からないところの質問を受けることがあり、説明したら、「わかりやすい」「教え方がうまいね」といってもらえた。
国語は漢字を覚えるのが苦手で、テスト前になるたび泣きながら暗記をしていた。
授業では積極的に手を上げて答えようとしていた。
〈算数が好きで、国語(漢字の暗記)が苦手だったのはなぜ?〉
→算数は一度解き方が分かれば、それ以上の暗記が必要なかった。算数の解き方を覚える作業は、「暗記」よりも、「攻略」をしているイメージ。漢字は書き順や読み方など1つの漢字について覚えることが多いし、黙々と覚える作業が嫌いだった。
〈当時、算数以外で「攻略」をイメージして取り組んでいたことはあったか?〉
あった。サッカーのクラブチームでプレーしているとき。自分がうまくなるためにチームメイトのプレーをまねているときや、試合で活躍するためにどの場面なら自分が得意になれるか考えていた。あの時はまさにゲームの攻略を考えているようだった。
〈他に嫌いだった黙々と覚える作業はあるか?〉
合唱コンクールで歌う歌の歌詞を覚えるのが嫌いだった。好きでもない歌をみんなで歌うために黙々と覚えさせられたのは嫌だった。あと、社会の授業であった地図記号も苦手だった。
〈算数はいつから好きと感じていた?〉
小学校4年生くらい。面積の計算など公式を使えれば考え方次第で応用が利く問題が好きだった。自分の知っている公式で、見たことない図形の面積が解けるのが楽しかった。
〈「教え方うまいね」と言われたことは今に活きている?〉
活きている。塾講師のアルバイトを行っていて、始めたきっかけが「人に教えることが得意・好きだった」ことだから。どうやったらわかってもらえるのか、楽しく学んでもらえるのかを考えるのが楽しい。問題が解けたときの嬉しさを自分が知っているゆえに、分かってもらいたいのかもしれない。
〈なぜ授業中積極的に手を上げていた?〉
正解!って言ってもらう達成感や、自分の自信につながることのため。
友達も積極的に手を上げる人が多く、負けたくない気持ちが表れていたのかもしれない。
もちろん間違えて恥をかくこともあったが、それを取り返すようにさらに手を上げていた。
上記の様に、なぜ?いつから?他には?といった自問自答を繰り返すことで、当時の自分を思い出していきます。
質問の答えに対してさらに質問をすると、その当時の感情や意志が見えてきたり、他の経験と似た感情を持っていると気づけたりします。別の経験でも根底にある意識が似ている場合、それがあなたの大切にしている価値観になります。
このような作業を各経験・各年齢で行い、時系列につないでいくと、現在のあなたに繋がり、将来のあなたをイメージする材料になります。
例えば自分史作成を通じて「負けず嫌い」という自身の特性が見えてきたのであれば、おそらく10年後も20年後も負けず嫌いな性格は変わることがないでしょう。
自分史は過去の複数の場面を振り返り、自身の「本当の価値観」を明らかにするものです。
「アルバイトでは負けず嫌いだったけど、ゼミ活動では負けず嫌いになれなかった」という場合、あなたの本当の性格は負けず嫌いではないかもしれません。
一場面を切り取った自己分析ではなく、過去の複数の場面を紐づけた自己分析を行うことで、自身の本当の特性がみえてくるでしょう。
ここまで自分史を作成できたら、友人や周囲の社会人、大学の就職相談センターの人などに見てもらうといいでしょう。今まで主観的に見ていた自分を、他者視点で見直してもらえます。
今回は自分史の活用方法を紹介しましたが、人によっては、
「文章ばかりかいていて時間がかかるし、経験のつながりをイメージしづらい」
「A4用紙1ページでパッと自分の経験を振り返りたい」
と思う方もいると思います。その場合はモチベーショングラフをおすすめします。
モチベーショングラフは、過去の自分の体験を時系列に振り返り、その時の感情の揺れ動きを1枚の紙にまとめたグラフのことです。
ここまで自分史の書き方や具体例を見て、自分には合わないかもしれないと感じた方は、参考にしてみましょう。
④他人に見てもらう
自分史を作成するにあたり、おすすめしたいのが他己分析。自分だけの振り返りだけでは、自分自身と向き合いきれないことや、深堀りに主観が入ってしまうこともあります。
そこで、身近な家族や幼なじみの友人と一緒に振り返りを行い、他人から見た自分という新たな視点から分析してみましょう。
面接ではしばしば、周りの人にどう思われているかを問う質問がされます。面接対策の一環としても有効だと言えるでしょう。