【鉄道業界】JRの事業内容を理解しよう

2023/07/18
業界の仕事内容
鉄道業界
インフラ業界
目次
1.
JRとは?~私鉄との違い~
2.
JRの事業と仕事内容
3.
‌JRの主な3社の特徴
4.
JRの新卒採用選考について
5.
‌もっと深く鉄道業界について知るために
6.
‌さいごに

JRとは?~私鉄との違い~

前回の記事では鉄道業界について概観を解説しました。

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【業界研究】鉄道業界の事業と今後の動向


  • ‌今回は鉄道業界において大きな存在感を発揮するJRグループ各社についてご紹介。そもそもJRとはいったい何なのでしょうか?
    ‌JRとはかつての国鉄が分割民営化されたものです。大きな一つの事業体だった国鉄が地域に密着する形で、経営の合理化が進められていきました。現在ではJR各社で独自の事業が行われています。

    ‌‌一方、私鉄は民間の資本で事業を展開してきた鉄道会社です。JRよりもさらに事業エリアが限定され、会社ごとに多様な事業を展開
    しています。

    JRの事業と仕事内容

    JRが展開している事業で核となるのは、やはり鉄道事業です。在来線や新幹線は地域経済、日本経済に大きな影響を与えています。しかし、日本の人口減少が進む中で鉄道事業の飛躍的な業績向上は見込めません。そこでJR各社は私鉄のビジネスモデルに倣い積極的に多角化を進めています。
    以下ではJR各社の主だった事業とそこで働く人たちの仕事をご紹介。正しく把握して、JRに対する理解を深めてください。

    鉄道事業

    JR各社の核である鉄道事業。地域ごとに在来線や新幹線を擁します。この事業で、非常に重要になってくるのが安全対策です。経営の最優先課題とも言えるこの安全を、技術系社員や駅員、車掌、運転士といった現業職員などの多くの社員が支えています。日本の鉄道は安全性、またダイヤの確実性で世界的にも高い評価を受けていますが、それらは現場で働く社員によって担われているのです。

    在来線

    多くの会社にとって大きな収益源となるのが在来線です。JR東日本は首都圏に地盤を持ち、山手線など様々な路線が大きな収益を獲得。JR九州は各地に観光列車を走らせ、人気を博すなど各社独自の展開を行っています。その一方で、地方ローカル路線の多くが赤字に陥っており、問題を抱えた路線が多数あるのもまた事実。収益にも地域差が生まれています。

    新幹線

    新幹線は、JRのみが展開している高速鉄道。東京と大阪を結ぶ東海道新幹線を擁するJR東海は鉄道事業による収入の大半を新幹線が占めるなど、新幹線を持っている会社の売上に大きく貢献しています。

    ‌九州新幹線は開業から5年ほどですが、JR九州の鉄道事業における収入の3分の1を占めるなど大きな収益の柱に成長。JR西日本の北陸新幹線開通によって北陸地方は大きな盛り上がりを見せました。‌新幹線は大きな利益をもたらすことから、JR各社だけでなく、全国の自治体の期待も非常に高くなっています。

    ‌そして、今後の大きな目玉となるのが2027年に予定されているリニア中央新幹線の開通です。東京-大阪間を約1時間結ぶ新ルートの開通は大きな経済効果を生むことが期待されています。

    ‌こういった事業には技術系の社員のみならず、事務系の社員も関与します。工程の管理や用地買収、また資材調達も文系社員の仕事です。リニアのような国家レベルのプロジェクトは文理を問わず様々な人たちが関わりながら進められています。

    非鉄道事業

    JR各社は大手私鉄に比べて、非鉄道事業が占める割合は大きくありませんでした。しかし人口減少が進む中で、鉄道事業の収益が今後飛躍的に伸びるとは考えにくいのが現状です。ゆえにJR各社も、近年は駅という好立地を生かして積極的に新たな事業を展開しています。

    流通・サービス

    駅に付随する商業施設の展開は流通・サービス事業に該当します。

    ‌弁当や軽食を販売している小型売店のキオスクは全国に展開されているほか、JR東日本ではニューデイズというコンビニエンスストアが多くの駅に出店され、利便性を高めています。これ以外にも駅ナカと呼ばれる、駅構内に展開する商業スペースを積極的にリニューアルするなど商業施設の収益拡大が進められています。

    ‌また、JR東日本はショッピングセンター事業の海外出店、アジア等の都市鉄道事業者と連携した駅構内の開発など鉄道事業を展開していない地域に向けた商業施設の進出を模索。事業のエリアを駅から市中、さらに海外にまで拡大させつつあります。

    不動産

    非鉄道事業の中で非常に大きな利益をもたらすのが不動産事業です。駅ビルにおけるオフィスフロアの賃貸や商業施設のテナント料が収益となるほか、社宅跡地を再開発し分譲マンションの展開、また賃貸マンションの運営まで行っている会社もあります。

    ‌不動産事業の利点は事業単体での売上のみならず、沿線人口や駅利用者の増加によって鉄道事業との相乗効果も望める点です。例えば、JR九州では、駅周辺の再開発を積極的に行い、不動産事業が鉄道事業をしのぐ勢いで成長しています。

    その他

    沿線や駅の価値を高めるための事業は以上の2つだけではありません。より住みよい街にするための事業としてJR東日本は託児所を展開しています。住みやすい街を鉄道会社が主導して作り出していくことで、鉄道事業、不動産事業との相乗効果も狙えます。

    ‌そのほかにも、ICカードを利用した電子マネー事業やクレジットカード事業も展開するなど、人々の生活に密着した事業を幅広く展開。人々の暮らし全般に、鉄道会社は手を広げています。

    ‌JRの主な3社の特徴

    JRグループには、JR東日本やJR西日本をはじめとした6つの旅客事業会社、1つの貨物事業会社、研究機関、コンピュータシステムを担う会社があります。
    JRグループに属する会社一覧
    ここではJRの中でも主要であるJR東日本、JR西日本、JR東海の3社についてご紹介していきます。

    JR東日本

    JR東日本は関東、甲信越から東北まで、1都16県という広範囲に営業エリアを持っています。輸送人員は年間約65億人であり、この数字はインドに次いで世界で2番目に多いです。

    2022年度3月期(2021年度)の営業収益は約1兆9,800億円で、日本の鉄道業界の中で最も多いです。営業収益が2番目に多いJR西日本にも約1兆円の差をつけています。

    先述したように営業エリアは広範囲に及び、また不動産・ホテル事業や流通・サービス事業においても高い収益を持っています。JR東日本は、規模の大きい案件と関わりやすいところが魅力です。

    セグメント別売上高比率

    下記のグラフを見てわかる通り、JR東日本では運輸事業での売上が全体の約6割を占めています。
    JR東日本の2021年度セグメント別売上高

    運輸事業のうち関東の在来線の売上が最も多く8120億円、次に新幹線が2580億円、関東以外の地域の在来線が430億円となっています。

    JR東日本グループの経営ビジョン『変革2027』によると、会社発足から30年の間は鉄道事業を中心に売上や利益を創出していましたが、今後10年は成長余力の大きい生活サービスやIT・Sucia事業に経営資源を重点投入していきます。

    またその他事業において、JR東日本のMasSサービスアプリを軸にグループ内外のサービスを連携し、自宅から目的地までのシームレスな移動を実現するための取組みも行っています。

    シェアカーやレンタルサイクルの提供会社、航空会社などと協力しながら、一つのアプリで複数のモビリティの手配や決済が完了できるプラットフォームの開発もしており、IT・Sucia事業に注力していることが分かります。

    JR西日本

    JR西日本の営業エリアは、北陸〜近畿〜中国〜九州北部までの2府16県におよびます。この区間内の在来線に加え、東海道山陽新幹線、山陽九州新幹線、北陸新幹線の運行もしています。

    2005年4月に106名の乗客と1名の運転手が死亡した福知山線列車事故の発生以降、JR西日本は安全性向上に特に力を入れ、「JR西日本グループ鉄道安全考動計画」を策定しました。

    他にも、地域価値の向上のため、瀬戸内における一大周遊エリアの創出や、地域ビジネスの創造や育成等を通じて、交流人口や沿線の定住人口の拡大にも取り組んでいます

    セグメント別売上高比率

    JR西日本のセグメント別売上高比率を見ると、運輸業の占める割合がJR東日本と比べて少ないことが分かります。

    運輸業の内訳は、新幹線が43.4%、近畿圏の在来線が43.2%となっており、新幹線と近畿圏の在来線がほぼ等しいです。
    JR西日本の2021年度のセグメント別売上高

    『その他』には鉄道事業と相乗効果の高いホテル業や旅行業、建設工事業などが含まれており、ホテル業では、客室リニューアルや各種イベントの実施等による販売拡大に、旅行業では、インターネット販売の充実や鉄道利用商品の販売拡大に取り組んでいます。

    JR東海

    JR東海では、東京〜名古屋〜大阪を結ぶ東海道新幹線と、名古屋・静岡地区の都市圏輸送を中心とした12線区の在来線を運営しています。

    JR東海のマーケットエリアである東京・名古屋・大阪地域は、世界の主要国の経済規模に匹敵するほどであり、市場規模が大きいという強みを持っています。

    2021年度の営業収益は約9351億円と、JR東日本、JR西日本に次いで3番目に大きいです。

    品川〜名古屋間を約40分で繋ぐ超電導リニアによる中央新幹線の開通も2027年以降に控えており、注目が高まっています。

    セグメント別売上高比率

    JR東海のセグメント別売上高を見てみると、運輸業が約半分を占めていることが分かります。
    JR東海の2021年度のセグメント別売上高

    2021年度の運輸業の内訳は、新幹線が4,173億円、在来線が588億円でした。また東海道新幹線の売上は、在来線の約7倍となっています。

    1964年の東海道新幹線開業により一貫して東海道新幹線の輸送サービスを向上してきたJR東海。開業時点で、東京〜大阪間の移動時間はそれまでの6時間30分から3時間10分に。現在では2時間22分になっており、リニア新幹線が開通したら1時間7分へと短縮されます。

    JR東海の魅力は、このような新幹線による輸送サービスの改善に努めているところであるといえるでしょう。

    JRの新卒採用選考について

    ここからは、JRに就職したいみなさんに役立つ、募集職種や採用スケジュール、年収などの情報をご紹介していきます。

    JRで募集している職種

    様々なビジネスフィールドに携わり、将来的に各部門のマネジメントをすることが期待される「総合職」と、鉄道部門において安全な運行のために技術面から支える「プロフェッショナル職(=エリア職)」。JRで募集しているのは、これらの2つの職種が主です。

    「総合職」では数年ごと、ビジネス戦略、IT戦略など幅広い分野に渡ってジョブローテーションを行いながら、経営層となるための知識や技術を養います。
    「プロフェッショナル職」では駅・乗務員、車両・機械設備などの部門ごとに現場第一線での経験を積み重ね、専門知識や技術を身につけていきます。

    JRの新卒採用では、「総合職」と「プロフェッショナル職」の間に応募資格の違いがあることはなく、卒業時点での特別な技術や資格を求められることはありません。

    営業・マーケティング・経営などのビジネス的な側面から鉄道業界に関わりたい場合は「総合職」、鉄道業界における専門性を高めていきたい場合は「プロフェッショナル職」が向いています。

    JRの採用スケジュール

    以下はJR主要各社の2024年卒採用のスケジュールです。ぜひ参考にしてみてください。

    ▼JR東日本
    応募開始:
    2023年3月1日(水)
    エントリーシートの登録および適性検査:
    第1回締め切り 2023年3月14日(火)
    第2回締め切り 2023年4月4日(火)
    書類選考合否結果:
    2023年6月15日(木)まで
    順次面接


    ▼JR東海
    応募開始:
    2023年3月1日(水)
    エントリーシート提出締め切り:
    2023年3月12日(日)〜2023年5月7日(日)
    ※職種・系統により異なります
    書類選考合否結果:
    5月末まで
    順次面接

    JRの採用人数と倍率

    どれくらいの確率で受かるのかについても、就活をする上で気になる点ですよね。

    そこで、リクナビに記載された募集人数とプレエントリー数から、2024年卒の採用選考倍率を計算してみました。

    ▼JR東日本
    プレエントリー数:8626名(*2023年3月19日時点)
    募集人数:総合職 46~50名、エリア職 201~300名
    予想倍率:約188倍〜約25倍


    ▼JR西日本
    プレエントリー数:3307名(*2023年3月19日時点)
    募集人数:301名〜
    倍率:約11倍


    ▼JR東海
    プレエントリー数:9350名(*2023年3月19日時点)
    募集人数:51~100名(昨年度実績)
    倍率:約183倍〜約94倍

    JR各社の年収

    働く上で知っておきたいのが年収の情報。JR各社によって年収も異なります。
    ここでは、JR東日本、西日本、東海の3社の平均年間給与をご紹介します。

    JR東日本の年間平均給与:約639万円
    JR西日本の年間平均給与:約567万円
    JR東海の年間平均給与:約687万円

    比較してみると、JR東海の年間給与が一番高いようでした。

    やりたい仕事内容や仕事をしたい地域などと一緒に、年収も検討してみてください。


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    さいごに

    ここまで、JR各社の取り組みについて説明してきました。鉄道以外にも展開している多様な事業についても理解が深まったと思います。ぜひ、キャリア選択の参考にしてください。

    ‌次回の記事は私鉄についてご紹介します。JR以上に様々な事業を展開している私鉄各社。事業の内容も会社によって大きく異なります。ぜひ、私鉄の事業を把握して鉄道業界全体への理解につなげてください。

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