【建設業界】業界構造と現状・課題と今後の動向

2023/07/18
インフラ業界
ゼネコン
建設業界
目次
1.
‌はじめに
2.
建設業界の構造
3.
建設業界における企業種類と各分野の代表的な会社
4.
《2023年度版》建設業界の現状・課題と今後の見通し
5.
より深く建設業界について知りたい方へ

‌はじめに

大きな建造物を手掛ける、建設業界。その社会貢献性の高さから志望する学生が多い業界です。しかし、業界の構造や現状・課題、そして今後の動向まで把握できている方は少ないのではないでしょうか?

‌この記事では、建設業界の構造から今後の動向までわかりやすく解説していきます。ぜひ、建設業界への理解を深め、今後のキャリア選択に役立ててください。

建設業界の構造

「建設業界」と聞いてみなさんが思い浮かべるのは、おそらくゼネコンと呼ばれる総合建設会社なのではないでしょうか?ゼネコンには大企業も多く、社名を見聞きすることも多いでしょう。しかし、建設業界の仕事はゼネコンだけが担っているわけではありません。以下で建設業界の構造について解説していきます。
発注元(国、自治体、民間)→ゼネコン→専門工事業者(サブコンを含む)→技能工
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上記の流れは、建物ができるまでに関わる組織を簡略にまとめたものです。まず国や自治体、民間企業が土木・建築工事発注します。それを受注するのが、ゼネコンと呼ばれる建設会社。ゼネコンは工程や資材費の管理。さらに、現場職員の安全管理を行い、下請け企業の取りまとめを担います。その下請け企業にあたるのが、専門工事業者です。ゼネコンから工事を受注し、大工や左官などの専門分野の工事を担います。この専門工事業者の中でも電気、空調などの各種設備を担う設備会社は一般にサブコンと呼ばれます。このサブコンや専門工事業者から、実際に作業を行う技能工を抱えている中小の事業者に発注をかけ、建設が進んでいくのです。

実際の建設現場には、様々な作業が生じます。それらを管轄する企業は必要に応じて、さらに下請けの企業に発注。そこからさらに発注をかける場合があるなど、建設業界は重層的で複雑な下請け構造になっています。

建設業界における企業種類と各分野の代表的な会社

上で、建設業界の構造について解説しました。ここからは各種企業が、担っている役割について紹介していきます。

ゼネコン

ゼネコンは各種の工事を請け負い、サブコンなどの専門工事業者に発注して工事全体を取りまとめる企業です。

ここで取り上げたいのが、スーパーゼネコン(以下、スーゼネ)と呼ばれる大手ゼネコン5社。年間の売り上げが1兆円を超え、これまでにも大きな案件を数多く担ってきました。スーゼネほど幅広い分野に強みを持つ建設会社というのは、世界的見てもあまり例がありません。近年は建設業以外の開発、エネルギーといった分野の収益化に取り組んでおり、今後に向けたさらなる事業展開も予測されます。

‌また、スーゼネ以外のゼネコンも、海洋事業やトンネル工事、病院建設など分野ごとに強みを発揮。ぜひ、自分が関わりたい事業に即したゼネコンを探してみてください。

ゼネコンの代表的な企業

スーパーゼネコンと呼ばれる超大手ゼネコン企業は、鹿島建設、清水建設、大成建設、大林組、竹中工務店の5社です。2021年度(2022年度3月期決算)の各社売上高・営業利益、年収は以下の通りです。売上高ランキング順にご紹介します。

1位 鹿島建設
売上高:2兆797億円(前年比+9.0%)
営業利益:1234億円(前年比△12.5%)
平均年収:1128万円

2位 大林組
売上高:1兆9229億円(前年比+8.8%)
営業利益:411億円(前年比△66.7%)
平均年収:1025万円

3位 大成建設
売上高:1兆5432億円(前年比+4.3%)
営業利益:961億円(前年比△26.4%)
平均年収:964万円

4位 清水建設
売上高:1兆4830億円(前年比+1.8%)
営業利益:451億円(前年比△54.9%)
平均年収:978万円

5位 竹中工務店
売上高:1兆2604億円(前年比+1.8%)
営業利益:463億円(前年比+16.5%)
平均年収:990万円

以上のスーパーゼネコンの他にも、長谷工コーポレーション、戸田建設、五洋建設、前田建設工業も代表的な企業です。

サブコン

専門工事業者の中で、設備などを担う企業であるサブコン。具体的には電気設備や空調設備、防災設備などがサブコンによって施工されます。設備が非常に重要な工事においては、ゼネコンではなく、建造物の発注元から直接受注する場合もあるなど、非常に重要な役割を果たしています。

サブコンの代表的な企業

サブコンの代表的な企業を2021年度(2022年度3月期決算)の売上高ランキング順にご紹介していきます。

1位 きんでん
分野:電気
売上高:5668億円(前期比+1.9%)
経常利益:400億円(前年度比△10.6%)
平均年収:888万円

2位 関電工
分野:電気
売上高:4956億円(前年度比△10.9%)
経常利益:318億円(前年度比+2.3%)
平均年収:745万円

3位 九電工
分野:電気
売上高:3766億円(前年度比△3.9%)
経常利益:368億円(前年度比+2.6%)
平均年収:678万円

4位 高砂熱学工業
分野:空調
売上高:3027億円(前年度比+10.0%)
経常利益:156億円(前年度比+12.5%)
平均年収:890万

5位 明電舎
分野:電気
売上高:2550億円(前年度比+10.3%)
経常利益:102億万円(前年度比+20.6%)
平均年収:737万円

サブコン企業は他にも、サーラコーポレーション、ユアテック、トーエネック、大気社、中電工などがあります。

建設設計会社

建設設計会社は建築物や都市の計画立案や設計、また工事管理などを行う企業のことです。ゼネコンは自社で設計部門を抱えている場合もありますが、建設設計会社は設計を専門に、独立している企業を指します。また、組織として運営している場合もあれば個人事務所など規模もまちまちです。

‌新国立競技場の設計を例に挙げて考えてみましょう。新国立競技場は、ゼネコンである大成建設と2つの建設設計会社の共同企業体の案が採用されて建設が進められています。その2つの設計建設会社というのが、梓設計と隈研吾建築都市設計事務所。前者は組織系建築設計事務所で後者は個人の意向が強く反映された建築設計事務所です。
‌設計事務所にも規模や志向などそれぞれ特徴があります。手掛けた作品などを比較しながら、検討してみてください。

建設設計の代表的な企業

建設設計の代表的な企業を2021年度決算の売上高ランキング順にご紹介していきます。

1位 日建設計
売上高:479億円(前年度比+13.9%)
担当した建築物:NHKホール、東京スカイツリー、東京タワー、京都迎賓館など
【参考】日建設計

2位 NTTファシリティーズ
売上高:211億円(前年度比△14.4%)
担当した建築物:東京中央郵便局、東京オペラシティ、豊洲センタービル、東京国際空港第2ターミナルビルなど

3位 三菱地所設計
売上高:199億円(前年度比△0.6%)
担当した建築物:横浜みなとみらい、横浜ランドマークタワー、ザ・ペニンシュラ東京、御堂筋フロントタワーなど
【参考】三菱地所設計

4位 日本設計
売上高:176億円(前年度比+3.3%)
担当した建築物:京王プラザホテル、新宿アイランドタワー、渋谷マークシティ、三鷹の森ジブリ美術館など
【参考】日本設計

5位 梓設計
売上高:124億円(前年度比+0.6%)
担当した建築物:函館空港国内線旅客ターミナル、東京国際空港国際線旅客ターミナル、埼玉スタジアム、テレビ東京天王洲スタジオなど
【参考】梓設計

他にも、東京ヒルトンホテルや恵比寿ガーデンプレイスを担当した久米設計、鉄道建築の設計に強みをもつJR東日本建築設計、東京国際展示場や宮崎県立芸術劇場を担当した佐藤総合計画などがあります。

その他の企業

建設業界には上に挙げた分け方では、分類しきれない企業があります。

‌例えば橋梁メーカー。一般には建設業界に分類されないことが多いですが、橋の施工を行っています。

‌それ以外で挙げられるのが、基礎、地盤改良などの工事を担う特殊土木の企業。土壌汚染対策など私たちの安全に直結する部分で、大きな役割を果たしています。

代表的な企業

横河ブリッジ(橋梁メーカー)、ライト工業(特殊土木)

《2023年度版》建設業界の現状・課題と今後の見通し

建設業界の現状と抱えている問題、そして今後の展望について解説していきます。業界について客観的に把握し、キャリア選択に役立ててください。

‌インフラ工事は今後も多々!建設は日本の景気を盛り上げる業界

2021年に開催されたオリンピック・パラリンピックのために、国立競技場が新しく立て替えられるなど、都市の再開発が盛んになっていました。「再開発がひと段落したら、建設業界は盛り下がるのでは?」という疑問を持っている方もいるかもしれません。

2025年に開催される予定の大阪万博や、リニア新幹線、高速道路といったインフラ工事が今後もあることから、建設業界は2023年以降も景気をけん引する業界であると考えている人も多いです。

内閣官房では国土強靱化基本計画において、インフラ施設等の耐震・津波対策、老朽化対策の推進を行っています。事業規模の目処として15兆円程度が想定されている『防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策』が策定されたこともあり、建設業界は日本の景気を盛り上げる業界となりそうです。

業界全体で進むDX化。ドローンやAIを活用?!

建設業界で現在深刻な問題として捉えられているのが、実際の作業を担う技能工の減少です。理由として挙げられるのが、技能工の高齢化と成り手の減少。建設現場は技能工に限らず、非常に過酷です。現に現場監督が過労で自殺して労災が認定されるなど、職場環境の過酷さは明るみになっています。
‌そういったことが原因となり、若者が建設業界を敬遠。深刻な人手不足に陥っています。人手不足がさらに進むと、人件費の高騰は避けられません。早急な処遇改善に業界として取り組み、イメージアップを図っていく必要があると言えます。

このような課題を抱える建設業界では、人材不足や労働環境の改善のためにDX化(=デジタルトランスフォーメーション、デジタル変革)が求められています。

建設業界での仕事は現場での作業が多いという印象を持っている方も多いとは思いますが、現在建設業界ではリモートワークが浸透してきています。

総務省の調査によると、建設業界におけるリモートワークの普及率は2019年度に22.5%だったものが、2021年度では57.9%まで増加。施工管理や設計業務がリモートになることで、移動や残業時間を減らすことに繋がっています。


また国土交通省は『i-construction』の実施・加速化によって建設業界のICT化を推進しています。ドローンを使用した空中撮影による測量や、機械の自動運転化などの技術を浸透させることによって、危険な作業などを行わずにすむようになるでしょう。

ウッドショックで建設資材の価格高騰!今後の見通しは?

ウッドショックとは、木材の価格が高騰している状態のことです。新型コロナウイルス感染症の流行により2021年にウッドショックが起こり、木材の需要に対して供給が追いつかなくなりました。

‌供給不足となった具体的な原因として、以下の4つが挙げられます。

1. カナダにおける木材業界のストライキや欧州・北欧で発生した虫害、アメリカ・カリフォルニア州での山火事によって、コロナ前から木材流通が減少していた。
2. コロナ禍の各都市におけるロックダウンや外出規制などによって、世界的に原材料の調達から消費までの流れが滞った。
3. 外出自粛などの影響で巣ごもり消費が増加し、コンテナの製造量と使用量のバランスが崩れ、伐採から輸送までの流れが停滞した。
4. アメリカで住宅ローン金利を下げる超金利政策によって住宅ブームが起こり、滞っていた木材流通に追い討ちをかけた。

経済産業省によると、国内の製材価格は2021年9月で前年末比+47%上がっています。またアメリカからの輸入価格は前年末比+175%、ヨーロッパからのものは+99%、ロシアなどの北洋からは+96%高騰しています。


このようなウッドショックによって木材の価格が高騰すると、建築コストの上昇、また、着工が遅くなるといった影響が出てきます。木材が確保できずに工事が延期になったり、見送りになったりすると、建築業界全体の売上にも打撃が出てくることは明らかです。

一方で2021年5月末をピークにアメリカでは木材価格は下降しており、日本でも2021年末頃から下落傾向が見られるようになりました。


とはいえ、ロシアがウクライナ侵攻に対する経済制裁への報復措置として輸出規制をしたこともあり、今後もウッドショックが起こる可能性は大いにあります。海外輸入ではなく国内産の木材に切り替える、国内林業の育成に力を入れるなどの対策に取り組む必要があります。

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